東京キチの非日常的日常
平日の食卓に、7品もの料理が並んだ。料理好きのトシさんとトモちゃんが作ってくれたものだ。
サラダ、おでん、栃尾揚げなどなど、「この量を3人で食べるのっ!?」なんて、嬉しい悲鳴をあげたり、舌鼓を打ったり。みんなでワイワイ食べるのは、ただそれだけで楽しいものだ。
ゆうべの出来事
そうこうしていたら、玄関のドアが開き、白人女性が入ってきた。先週から泊まっているカナダ人ゲストだ。
せっかくだからと食卓に呼び、1時間ぐらい喋っただろうか。
聞けば、日本の浮世絵や江戸文化が好きで、念願の初来日に、ここ根津での滞在を選んだらしい。
「今日は忠臣蔵の寺に行ったの」などと嬉しそうな表情。それだけで日本人として嬉しくなった。
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しばらくすると、また玄関のドアが開いた。
今度は、近くでバーを営むリョウさんだった。何故かジャズシンガーの女性と、歯科医の男性も連れている。
聞けば、リョウさんと歯科医さんはパパ友で、シンガーさんは歯科医さんの患者なんだと。
それが縁で、シンガーさんはリョウさんのバーでLIVEも。ローカル数珠つなぎのエピソードで、心が温まるようだった。
東京キチというところ
ただの平日の夜に「グローバル」と「ローカル」が共存する。これが私の暮らす「東京キチ」というところだ。
ここはシェアハウスであり、ゲストハウスでもある。多くの人が交錯するから、ただ住んでいるだけで、こんな楽しい夜に出会えるのだ。
非日常的な日常
私は「ゆうべ」を忘れたくなくて、この心に引っかかる感じが、どこから来るのか考えてみた。
それで思い出したのが、20代の頃。バックパッカーをかじっていた頃のことだ。
あの頃、海外のゲストハウスに泊まると、日本の普通の暮らしでは、決して出会えないような人たちと出会えた。国籍も職業も年齢もなく打ち解け、みんなで味わうあの感じ、あの高揚感は、日常という「枠」から、私を自由にしてくれた。
あの大好きだった感覚が、日常生活の中で得られる。それが「ゆうべ」であり、「東京キチ」なのかもしれない。